海外留学助成 中間近況報告

牟⽥ 芳実 先生
福岡⼤学 内分泌・糖尿病内科学
2025年度留学助成(2026年 中間近況報告)

【留学先研究機関】
Joslin Diabetes Center, Harvard Medical School

2025年より、米国ボストンにあるジョスリン糖尿病センターのGeorge King先生の研究室にポスドク研究員として所属し、1年が経過しました。このたび、近況についてご報告させていただきます。

私の所属する研究室では、主に糖尿病合併症に焦点をあてた研究が行われております。特に、Joslin 50-Years Medalist Studyというユニークな臨床研究が進められており、50年以上にわたり1型糖尿病に罹患している患者を対象に、糖尿病合併症の発症や進展を抑制する保護因子の探索が行われております。私自身は対象患者の臨床検体を用いたマルチオミクス解析によって同定された候補因子に着目し、糖尿病網膜症に対する保護メカニズムの解明に取り組んでおります。

King研究室のメンバー
King研究室のメンバー

George King先生は臨床研究から得られた知見を重視しており、これらをもとに基礎研究によるメカニズムの解明から、創薬や新しい検査法の開発に至るまで、幅広く研究を展開しております。週1〜2回のプロジェクトごとのミーティングに加え、週1回の全体のミーティングが行われています。普段は基礎実験に携わらない臨床研究者からも、時折鋭い質問が投げかけられることもあり、新たな気づきを得ることも多く、大変刺激を受けております。渡米前は英語によるコミュニケーションに不安もありましたが、回数を重ねるうちに少しずつではありますが、自分の考えや伝えたいことを発表できるようになりました。

また、2025年にはジョスリン糖尿病センターの基礎研究部門がCenter for Life Science (CLS)ビル内に移転し、現在は複数の研究室がひとつのフロアに集まっています。そのため研究室間の垣根も低く、実験手法などについても所属研究室の枠を超えて気軽に相談できる環境が整っております。はじめは物品のオーダーひとつでも苦労することがありましたが、周囲の研究者に助けてもらいながら、新しい研究環境に慣れることができました。

生活面についてですが、ボストンは豊かな自然と歴史ある町並みが調和した美しい街です。長く厳しい冬の時期には日本が恋しくなることもありますが、春から秋にかけては気候が安定しており、湿度も日本と比較して低く、大変過ごしやすいです。公共交通機関も充実しており、スーパーなどへのアクセスも良いため、日常生活での不便を感じることは少ないです。ただし、家賃を含む生活費の高さは、ボストン留学において、どうしても大きな負担となります。

(ジョスリン糖尿病センターへの通勤路)
ジョスリン糖尿病センターへの通勤路
野生の七面鳥
野生の七面鳥

ボストン周辺には世界的に有名な研究機関が数多く集積しているため、そこで活躍されている同世代の日本人研究者達との交流も盛んです。専門分野の違う研究者同士での集まりに参加する機会も多く、研究に関する意見交換だけでなく日々の生活について相談したり、互いに助け合ったりする機会も多くあります。

私は妻と二人の子どもとともに渡米しておりますが、家族にとって慣れない異国の地で生活を始めることは容易ではありませんでした。特に子どもたちは、英語が十分に話せない状態で学校生活をスタートしたこともあり、つらい思いをさせた時期もあったと思います。はじめのうちは親として心配することも多々ありましたが、少しずつ友人も増え、今では学校近くの公園で現地の同級生達と楽しそうに遊ぶ姿を見ることができるようになりました。文化や言語の壁を超えながら逞しく成長している姿は、私にとっても大きな励みとなっています。妻もはじめは英語でのコミュニケーションに苦労していたようですが、現地の図書館で開催されている英会話サークルなどに通うことで英語力も向上し、日々の生活を楽しむ余裕が生まれてきたように感じられます。家族にとっても日本にいるだけでは得難い貴重な経験となっており、改めて留学してよかったと感じます。

以上、簡単ではございますが、中間報告とさせていただきます。残りの研究期間も、成果を上げられるように研究に励み、ここで得られた知識や経験を還元できるように引き続き精進して参りたいと思います。

最後になりますが、このたびの留学に際し多大なご支援を賜りました鈴木万平糖尿病財団の皆様、福岡大学医学部 内分泌・糖尿病内科学講座の皆様に心より感謝申し上げます。