海外留学助成 中間近況報告
2025年度留学助成(2026年 中間近況報告)
【留学先研究機関】
Institute for Diabetes and Organoid Technology,
Helmholtz Munich
このたびは海外留学助成という貴重なご支援を賜り、心より御礼申し上げます。おかげさまで、生活面の負担を軽減しながら研究に集中することができ、ドイツで充実した留学生活を送っております。
現在、ドイツ・ミュンヘンのHelmholtz Munichおよびミュンヘン工科大学(TUM)において、膵β細胞内の酸化還元制御とストレスや細胞死の関係について研究しています。

留学前には、主として糖尿病の発症や進行に関わる膵β細胞の糖代謝応答を研究する予定でした。しかし研究を進める中で、膵β細胞という特定の細胞種にとどまらず、細胞が酸化還元バランスをどのように維持し、その破綻がどのように細胞死へつながるのかという、より根源的な課題に直面しました。
これは当初の計画からの単なる逸脱ではなく、膵β細胞が酸化ストレスに脆弱である理由を理解するためには、その背景にある普遍的な細胞生物学的機構を明らかにする必要があると気づいた結果です。現在は、細胞内の還元力が失われた際に、タンパク質や細胞内小器官にどのような変化が生じ、細胞死へと進展するのかを、生細胞イメージングや遺伝子改変技術を用いて解析しています。
幸いにも、研究所内で所属ラボの垣根を越え、レドックス生物学を専門とする素晴らしい共同研究者に恵まれました。日々の議論から多くの刺激を受け、新たな視点や技術を取り入れながら研究を発展させています。このような共同研究関係を築けたことは、今回の留学で得た大きな財産です。

一方、海外から日本を見直すことで、日本の研究環境が持つ強みにも気づきました。ドイツでは、動物実験や遺伝子組換え実験について厳格で重層的な手続きが求められ、新しい着想を直ちに実験へ移すことが難しい場合があります。安全性や倫理性を担保する規制が不可欠であることは言うまでもありませんが、その上で研究者の判断を尊重し、比較的柔軟かつ迅速に試行できる日本の環境は、研究の創造性を支える大きな強みになり得ると感じています。
当初の予想とは異なる研究展開となりましたが、観察された現象から仮説を組み立て直し、新しい問いに挑戦する経験は、研究者として大きな学びとなっています。今後は、現在見いだしている現象の分子機構を明らかにし、学会発表や論文として成果を発信するとともに、得られた知見を膵β細胞の機能低下や糖尿病病態の理解へとつなげたいと考えています。
残りの留学期間も研究に尽力し、財団からいただいたご支援を成果として還元できるよう努めてまいります。改めまして、温かいご支援に深く感謝申し上げます。
村尾 直哉




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