海外留学助成 中間近況報告

安⽥ 拓真 先生
京都⼤学 糖尿病・内分泌・栄養内科学
2025年度留学助成(2026年 中間近況報告)

【留学先研究機関】
Joslin Diabetes Center, Harvard Medical School

まず初めに、多大なるご支援を賜っております鈴木万平糖尿病財団の皆様、ならびに留学へ送り出してくださった京都大学糖尿病・内分泌・栄養内科学の先生方に、心より御礼申し上げます。おかげさまで、海外留学も2年目を迎えようとしております。研究および生活の近況について、若い先生方のご参考に少しでもなれば幸いと考え、ご報告申し上げます。

私は現在、Joslin Diabetes CenterのLaurie Goodyear先生の研究室に所属し、主に運動と脂肪組織に関する研究に取り組んでいます。Goodyear先生は運動と糖尿病・代謝研究の第一人者であり、運動による脂肪組織の構造および機能変化に着目し、Crisp1、TGF-β2、12,13-diHOMEといった運動誘導性アディポカインを同定されてきました(Nigro P, et al. Diabetes, 2021; Takahashi H, et al. Nat Metab, 2019; Stanford KI, et al. Cell Metab, 2018)。また、NIH主導の国際コンソーシアムであるMoTrPAC Study Groupにも参画し、運動に伴う全身の分子変化を網羅的に解析した大規模データベースの構築にも貢献されています(MoTrPAC Study Group. Nature, 2024)。さらに、他施設との共同研究も活発に行われています。教育面においても非常に熱心で、これまでに50名以上のポスドクを育成され、その中には帰国後に第一線で活躍されている日本人研究者も多数いらっしゃいます。毎週の個別ミーティングでは常に建設的かつ前向きなフィードバックをいただいており、時には週3回、合計2時間以上にわたり議論する機会もありました。

一方で、私の計画性の拙さもあり、当初想定していたテーマの遂行が難しく、新規候補因子の探索に半年以上を要しました。実験段階に進めないもどかしい時期が続きましたが、研究室が保有するヒト・マウス・ラットの運動関連データベースを活用できたことは大きな支えとなりました。また、グループ内外の多くの先生方からのご指導とご支援が、研究を前進させる原動力となっています。日々のディスカッションを通じて建設的な意見をいただける環境は、本研究室の大きな強みです。学術的に厳しい指摘であっても配慮ある伝え方で、かつ平易な英語で説明していただけるため、前向きな姿勢を保ちながら研究に取り組むことができています。この経験は、帰国後に若い先生方と協働する際にも生かしていきたいと考えています。こうした環境のもと、現在は興味深い候補因子の同定に至り、細胞実験およびマウス実験を段階的に進めています。今後の結果次第では研究方針の修正も必要となる可能性はありますが、糖尿病の運動療法に貢献できる成果を目指し、粘り強く取り組んでまいります。

 グループメンバーとの集合写真
グループメンバーとの集合写真

生活面についてですが、ボストンは比較的安全で魅力的な都市です。100年以上の歴史を持つレンガ造りの建物と近代的なビルが調和し、音楽、スポーツ、芸術など世界有数の文化が息づいています。日本人も多く、日本食レストランやスーパーが充実しているほか、日本関連のイベントも盛んに開催されています。日本と比較すると治安面で注意は必要ですが、日常生活圏では夜間の一人歩きや公共交通機関の利用も大きな問題はなく、単身であれば車がなくても生活可能です。一方で、経済的負担と冬の厳しさは大きな課題です。特に物価は日本の2〜3倍程度で、家賃はシェアハウスで月800〜1000ドル、一人暮らしで2000〜3000ドル、家族向けでは3000〜4000ドルと非常に高額です。子供の保育費や習い事も日本の約3倍と高く、こうした事情から、現在は妻と二人の子供を日本に残し単身赴任をしております。家族と離れて暮らす寂しさはありますが、ジョスリン日本人研究者の会や単身赴任者のコミュニティなどを通じ、多くの方々に支えていただいています。また、日本人に限らず気さくな方が多く、拙い英語ながらも友人関係を築くことができています。仕事後に研究室メンバーとHarvard Medical Schoolの芝生でフットサルを楽しんだり、ランニングイベントに参加したりと、充実した時間を過ごしています。さらに、トリニダード・トバゴご出身のランニング仲間のご自宅に招いていただく機会もあり、国籍や職種を問わず多くの刺激を受けています。

 Japan Festivalの様子
Japan Festivalの様子

留学には言語や物価といった障壁がある一方で、それを大きく上回る価値ある経験が得られます。研究の進捗に悩む時期もありますが、日本では得難い学びを日々実感しており、留学して良かったと心から感じています。海外での仕事や生活に少しでもご興味があれば、ぜひ積極的に留学をご検討いただければ幸いです。私自身も、ボストンで得た経験を日本に還元し、糖尿病研究および治療の発展に貢献できるよう、支えてくださる皆様への感謝を胸に今後も精進してまいります。

 ランニング中に撮影したチャールズ川沿いの夕景
ランニング中に撮影したチャールズ川沿いの夕景