海外留学助成 中間近況報告

岩間 康哲 先生
⼤阪⼤学 脳神経感覚器外科学(眼科学)
2024年度留学助成(2025年 中間近況報告)

【留学先研究機関】
Scripps Research, San Diego

2024年10月より米国カリフォルニア州サンディエゴのスクリプス研究所(Scripps Research)のMartin Friedlander研究室(Friedlander lab)にポスドク研究員として留学しております岩間と申します。渡米後約1年が経ちましたので、このたび中間報告をさせていただきます。

スクリプス研究所はカリフォルニア州サンディエゴ市La Jolla地区とフロリダ州Jupiterに拠点を持つ、101年の歴史を誇る世界有数の非営利型生物医学研究機関です。私が所属するLa Jollaキャンパスは世界的に有名なTorrey Pines Golf Courseとも隣接しており、その向こうには太平洋が広がります。日中はゴルフやパラグライダーを楽しむ人々の姿、夕方には太平洋に沈む美しい夕陽を見ることができ、渡米当初はよくラボからの風景写真を撮っていました。

 研究室からの風景
研究室からの風景

サンディエゴはアメリカ西海岸の南端に位置し、年間を通じた快適な気候と治安の良さ、そして住民の親切さから、全米でも住みやすい街として知られています。休日はハイキングやピクニックに出かけたり、公園や海岸で過ごしたり、サンディエゴ・パドレスの本拠地であるペトコパークで野球観戦をしたりと家族で楽しんでいます。また、実験の調整を行いながらヨセミテ、セコイア・キングスキャニオン、デスバレーなどの国立公園を訪れ、家族そろって壮大な自然を満喫することもできました。本留学には妻と2人の娘が帯同しており、渡米当初は全く英語が話せなかった4歳の長女も、今では現地の学校の友達と楽しそうに英語で会話する姿が見られるようになりました。次女もまた新しい環境に順応し、家族全員がそれぞれの成長を遂げながら充実した日々を過ごしております。

 Petco Park (vs Los Angeles Dodgers): 大谷選手・山本選手も見ることができました。
Petco Park (vs Los Angeles Dodgers): 大谷選手・山本選手も見ることができました。

スクリプス研究所は所属するポスドクの約70%が海外からの研究者であり、研究室間の敷居も低く、留学生にとって大変研究しやすい環境が整っています。また、留学生向けのAmerican English Pronunciation and Communication classや、大学院生・ポスドク向けのCareer Planning class(学期あたり8〜12回で構成)だけでなく、自身が関わる研究に関するLightning Talks Competitionなど、多くの学びの場が提供されています。実際に他研究室の大学院生やポスドクに混じってこれらのclassを受講し、LinkedInを通じて全く面識のない方にinterviewを依頼し、その内容を他の受講生の前で発表するなど、日本では経験できないユニークな授業スタイルも体験することができました。

自身が所属するラボの主宰者であるDr. Friedlanderは1993年よりスクリプス研究所で研究室を主宰し、視覚科学分野において数多くの重要な研究成果を挙げてきました。研究分野はロドプシンの細胞内トポロジー形成から眼内血管新生、糖尿病性網膜症、加齢黄斑変性、黄斑部毛細血管拡張症などに至るまで多岐にわたり、網膜分野における分子生物学的研究で高く評価されています。研究室には、ヒト網膜オルガノイドや動物モデルを用いた実験に必要な設備・器材と熟練した専門スタッフが揃っており、効率的に研究を進めることができています。さらに、週1回のラボミーティングでは各研究者が担当する研究内容を発表し、活発な議論が交わされています。私は現在、生理的な毛細血管叢を持つ網膜オルガノイドを用いて糖尿病網膜症の病態をin vitroで再現し、新規病態機序を探索する研究を進めるとともに、複数のプロジェクトに従事することで充実した研究生活を送っています。

 夕暮れ時のScripps Research
夕暮れ時のScripps Research

以上、簡単ではございますが、中間報告とさせていただきます。この度の留学に多大なご支援をいただいた鈴木万平糖尿病財団の関係者の皆様、西田幸二教授、高橋政代先生、万代道子先生をはじめ、大阪大学眼科学教室ならびに神戸アイセンター病院研究センターの先生方に、心より感謝申し上げます。