海外留学助成 中間近況報告

三根 敬一朗 先生
佐賀大学 医学部 肝臓・糖尿病・内分泌内科
2024年度留学助成(2025年 中間近況報告)

【留学先研究機関】
Biology Department, Boston College

貴財団の海外留学助成によって留学2年目を迎えることができました。貴財団の皆様、審査員の先生方、ならびに留学に際してご支援を頂きました先生方に御礼申し上げます。

私はアメリカ、マサチューセッツ州ボストンにあるBoston CollegeのEmrah Altindis Labにポスドクとして留学しています。Boston Collegeはボストンの中心部から南西のGreen Line Bの終点に位置し、息を呑むような美しいゴシック様式の建物とキャンパスのある大学です。Emrah先生はJoslin Diabetes CenterのKahn Lab出身でKahn先生と共同研究を行なっているため、Boston Collegeに居ながらJoslinで研究されている先生方とも繋がりを持つことができました。Altindis Labはフランス、インド、トルコ、アメリカ、そして日本と多国籍メンバーで構成され、日々いろいろな発音の英語や文化の違いに囲まれ、日本では得られ難い刺激的な研究生活を送っています。最近、一緒に実験を行なっていたラボメンバーがPIとしてアメリカで独立したことはとても良い刺激になりました。

 Boston Collegeのキャンパス
Boston Collegeのキャンパス

Altindis Labは微生物が持つインスリン様ペプチドの発見を皮切りに、1型糖尿病を含めた自己免疫疾患、ウイルス感染制御、がん制御の研究を行なっています。私は留学前から引き続き1型糖尿病に関する研究を続けており、特に腸管と腸内細菌の代謝物に着目した発症予防法の開発を目指す研究を進めています。留学前はウイルス感染と1型インターフェロンシグナルに着目した1型糖尿病研究を行なってきました。腸管に着目した研究はこれまでに経験がなかったので一から勉強し直し、これまでとは異なる角度から1型糖尿病を理解するために日々実験を行なっています。ようやく良いデータが出始め、インパクトの高い論文となるよう考えを巡らせたり試行錯誤したりと、楽しい時間を過ごしています。

 Altindis Labメンバー。
Altindis Labメンバー

ボストンは様々な研究機関が密集しており、足を伸ばせはすぐに世界的に著名な研究者に会うことができます。セミナーなどで会話をした人が、参考にしている論文の著者やラボメンバーであったこともよくあり、内心とても感動しました。最先端の研究、情報、頭脳が集まったこの場所は世界でも有数であると感じます。生活面では、ボストンの治安はアメリカと思えないくらい良く、夜に一人で出歩いても問題なく、事件などもほとんど起きません。街は綺麗に整備され緑も豊か、公共交通機関も便利です。冬は寒く長いのが難点ですがすぐに慣れますし、日本と違う乾燥した気候で夏はとても過ごしやすい。日系や韓国系のスーパーがあり、値段が高いのに目を瞑れば日本と変わらない食事も可能です。家賃の高さ、物価高、インフレーションには驚きますが、ボストンの地は留学にとてもお勧めできる場所です。

 クリスマスツリーとBoston Collegeのメイン校舎
クリスマスツリーとBoston Collegeのメイン校舎

この1年で得た収穫物を昇華させ良い成果物を生み出し、良い報告ができるようこれまで以上に努力して参りたいと思います。最後に留学に送り出してくださった安西慶三教授、永淵正法特任教授をはじめとする佐賀大学医学部肝臓・糖尿病・内分泌内科の皆様にこの場を借りて心より御礼申し上げます。以上、末筆ではございますが、私の中間近況報告とさせて頂きます。