海外留学助成 中間近況報告
2024年度留学助成(2025年 中間近況報告)
【留学先研究機関】
Center for Interdisciplinary Cardiovascular Sciences
Brigham and Women's Hospital, Harvard Medical School
現在私はアメリカのマサチューセッツ州ボストンに住んでおり、ハーバード大学の関連病院の一つであるBrigham and Women’s hospitalのMasanori Aikawa教授が主宰するCenter for Interdisciplinary Cardiovascular Sciences (CICS)で動脈硬化症の発生機序をテーマに研究をしています。アメリカでの生活を始めて約8ヶ月が経ちました。この場をお借りして近況報告をさせていただきます。

Aikawa先生はマクロファージの研究者として世界から高く評価されており、American Heart AssociationのSpecial Recognition Award in Vascular Biology、Jeffrey Hoeg Arteriosclerosis, Thrombosis and Vascular Biology Award for Basic Science and Clinical Researchなど数々の賞を受賞されています。CICSはAikawa先生のMacrophage groupの他に、Elena Aikawa先生のCalcification group、Sasha Singh先生のProteomics groupの3つのグループから構成されており、合計で約30人の研究者が所属をし、心血管疾患に関連する研究を行っています。CICSは医師、製薬会社の研究者、大学院生、医学生など様々な背景を持つ研究者を世界中から受け入れており、私はラボで唯一の脳神経外科医として、マクロファージのシトルリン化に注目をして研究をしています。CICSには優秀な研究者が多く、また最新鋭の実験機器が揃っており、革新的な研究を行える環境が揃っています。毎週開催されるGroup meetingでは毎回2名の研究者が1人あたり1時間以上をかけて自分の研究プロジェクトの進捗状況を発表し活発な議論が交わされます。また、月に1回Research dayとJournal clubというミーティングも開かれ、ここでは3つのグループが一同に介して各々のprojectを発表したり、最新の論文を紹介したりしています。日々の研究では、思うように結果が出なかったり、自分の知識が足りないことを痛感することも多くあります。しかし、試行錯誤を繰り返し、周りの研究者に助けられながら、毎日刺激的な生活を送ることができています。
CICSのあるLongwood medical areaという地域はJoslin Diabetes Center、Boston Children Hospital、Dana-Farver Cancer Institute、Beth Israel Deaconess Medical Centerなどハーバード大学系列の病院が密集している世界でも有数のメディカルエリアであり、ここから世界的な研究が日々発信されています。世界最先端の研究に触れることができるとともに、世界的に著名な研究者の講演会やセミナーをすぐに聴ける環境にあることもここで研究生活を送る大きな強みかと思います。

左側には近年再開発が著しいFenwayの街並みが、右側にはDowntownの街並みが一望できます。
私はBrigham and Women’s hospitalからの書類が遅れたため、当初の予定より数ヶ月遅れて2024年9月に渡米をしました。日本から船便で送った荷物が紛失して届かなかったり、何回電話しても自宅にwi-fiの機材が届かなかったり、スーパーで買った肉が硬すぎて噛みきれなかったり、…ここでは書ききれないほどの日本では経験できない想定外の出来事が起こりましたが、妻の支えのおかげで2人の息子と4人で楽しく生活しています。
ボストンは全米の中でも屈指の治安の良さを誇ります。地下鉄やバスが充実しており場所を選べば車がなくても生活できますし、日本食やアジア系のスーパーも多く日本人にはとても住みやすいと思います。さらに、メジャーリーグの球場としては最古のフェンウェイパーク、アメリカで一番古い公園と言われているボストンコモン、全米有数の規模を持つボストン美術館など、観光名所もたくさんあります。一方で、私の感じるデメリットとしては物価の高さと冬の気候が挙げられます。円安の影響もあり物価はざっと日本の2-3倍のイメージで、家賃や保育園などの教育費もとても高いです。また、冬はとても寒く今年はマイナス10度を下回る日もありました。これまで東京に住んでいた私にとってはこのような環境には全く慣れておらず、厳しいものでした。一方で春〜秋は大変過ごしやすいかと思います。もしボストンへの留学を考えている方がいましたら、とてもおすすめできる場所だということをお伝えしたいです。

末筆ではございますが、本留学の実現に多大なるご支援をくださった鈴木万平糖尿病財団、また留学を許可し送り出してくださった東京科学大学脳神経機能外科学分野の皆様にこの場をお借りして心より御礼申し上げます。