海外留学助成 中間近況報告

平田 悠 先生
神戸大学大学院医学研究科 糖尿病・内分泌内科学
2024年度留学助成(2025年 中間近況報告)

【留学先研究機関】
Department of Cellular and Molecular Medicine, University of California, San Diego

2024年4月よりカリフォルニア大学サンディエゴ校(UC San Diego)のChristopher K. Glass研究室(Glass lab)へ留学している平田と申します。渡米後1年ほどが経ちましたので、中間報告をさせていただきます。

UCSDは10大学からなるカリフォルニア大学システムに属する州立大学であり、キャンパスはサンディエゴの中心部から少し北上したラホヤに位置しています。ラホヤは高級住宅地としても有名で、太平洋沿いの美しく開放的な景観と落ち着いた雰囲気を併せ持つ地域です。広大な敷地には医学、生物学、工学、経済学など様々な分野の研究施設が連立しており、キャンパス内ではいつも活気を感じることができます。

 UCSDのシンボルであるGeisel Library
UCSDのシンボルであるGeisel Library

私は大学院博士課程から骨格筋のbiologyに興味を持って研究してきましたが、筋を中心とした臓器連関について解析する過程でマクロファージの役割の重要性を認識し、特にゲノム・エピゲノム解析技術について学びたいと考えるようになりました。留学先のPIであるChristopher K. Glass先生は、ミクログリアやマクロファージの分子機能解析の世界的権威であり、それらの本質的な機能や特性に関する多くの重要な知見を見出しておられます。研究室では様々な病態あるいは発達段階におけるミクログリアやマクロファージの転写制御機構の解明を目的として、マウスおよびヒト検体を用いたChIP-seqやATAC-seqなどのNGSを用いた解析やプロテオーム解析が盛んに行われており、様々なゲノム解析のパイプラインを独自に有していることが特徴です。CRISPR-Cas9を用いたオリジナルな系を学ぶこともでき、自分の研究の幅が広がっていくことを実感できます。

Glass labには約20名の国際色豊かなメンバーがおり、Bioinformaticianも常時在籍しています。それぞれのバックグラウンドや得意分野は様々で、お互いに助け合いながら研究を進めています。定期的に開かれるラボミーティングでは活発な議論が交わされますが、教授室のドアは基本的にいつも開いており、ミーティングとは別に研究結果についてPIに気軽に相談することもできます。また、周囲にはScripps研究所やSalk研究所といった研究機関が数多く集積しており、研究会やシンポジウムに参加することで最新の科学に触れることができます。

 研究室が入っている建物(George Palade Laboratories)
研究室が入っている建物(George Palade Laboratories)

サンディエゴは西海岸の南端に位置し、年間を通して温暖で、雨が少なく湿度が低いのが特徴です。とても過ごしやすく、豊かな自然と都市の利便性の両方を楽しむことができるのですが、円安の影響もあり物価は高いと感じます。私と家族は大学から少し離れた地域に住んでいるのですが、治安は良く皆親切で、日々の生活は快適です。休日にはボールパークを訪れたり、公園や海岸でゆっくり過ごしたりすることができており、子育てにも良い環境だと感じています。

以上、簡単ではございますが、中間報告とさせていただきます。この度の留学に多大なご支援をいただいた鈴木万平糖尿病財団の関係者の皆様、小川渉先生、酒井真志人先生、神戸大学医学部糖尿病・内分泌内科の先生方に心より感謝申し上げます。