海外留学助成 中間近況報告

矢野 誠一 先生
九州大学 病態制御内科学講座
2023年度留学助成(2024年 中間近況報告)

【留学先研究機関】
Department of Cellular & Molecular Medicine,
University of California, San Diego

私は2023年5月よりカリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)のChristopher Glass labに留学しています。渡米後1年ほどが経ちましたが、鈴木万平糖尿病財団のご支援のおかげで、恵まれた環境での充実した研究生活を送ることができております。

私が所属するGlass labの主な興味は様々な病気におけるマクロファージの役割やその機序についてです。例えば近年ではアテローム性動脈硬化症、脂肪肝、アルツハイマー病などの炎症性疾患においてマクロファージの働きを制御する仕組み(転写制御)や、その先の治療法開発に様々な角度から取り組んでいます。手法としてはChIP-seq, ATAC-seq, シングルセルRNA-seqなどの次世代シーケンサーを用いた解析やリピドミクス、プロテオミクスなどの網羅的解析手法を駆使して、病態モデルマウスやヒト検体における様々な炎症について調べています。また共同研究先も多くあるため、実験技術を習いに行ったり、貴重なヒト検体を使用させてもらうこともスムーズにできています。

 ラボがある建物 (George Palade Laboratory)
ラボがある建物 (George Palade Laboratory)

ミーティングについては毎週1人の担当者が1時間程度かけて進捗報告を行う他、各自がボスのChrisと個別ミーティングを隔週(時折、毎週)で行います。

サンディエゴはカリフォルニア州の南端に位置しメキシコと国境を接しています。気候は、冬は暖かく夏は涼しい上、天気も基本的に毎日晴れなので申し分ありません。渡米当初、現地の人に「サンディエゴは毎日晴れているから、ちょっと雨が降っただけで気持ちがブルーになるんだよ」と言われて「そんな大袈裟な」と思っていましたが、1年経つと自分も小雨が降っただけで外に出るのが億劫になりました。治安も米国の中ではいい方であり、大学のあるUTCエリアは昼夜問わず学生も多く活気に溢れています。

また観光地も多くあり、メキシコの文化を色濃く残すオールドタウン、米国最大規模を誇る動物園の他、野生のアシカが生息するラホヤの海岸などはいずれも車で30分圏内ですし、水族館、遊園地、レゴランドなど家族で楽しめる場所も十分あります。またダルビッシュ投手、松井投手を擁するサンディエゴパドレスの本拠地でもあり、気軽にメジャーリーグの試合を観戦することもできます。

 UCSDの名所であるFallen Star (突き出た家の中にも入れます)
UCSDの名所であるFallen Star (突き出た家の中にも入れます)

このように気候、治安、レジャー施設にも恵まれた街ですが、生活費に関しては厳しいものがあります。大学近くに住むと1LDKの家賃が3000-4000ドル前後、保育園が週5日で1500 ドル程度です。また外食は、ちょっとしたランチでもチップ込みで1人30-50ドルぐらい、夜は近所の居酒屋に行って80-100ドルくらいと高いので基本的には自炊になると思います。このように経済的に長期滞在は難しい一方で、研究室の先輩たちを見ると論文を発表するのに3〜7年程度と長い時間がかかるケースも多いため、できるだけ効率良くプロジェクトを進めていく所存です。

以上、簡単ではありますが、私の留学の中間報告とさせていただきます。留学の実現にあたってサポート下さった鈴木万平糖尿病財団、小川佳宏教授をはじめとする九州大学大学院医学研究院病態制御内科学講座(第3内科)の皆様にこの場を借りて心よりお礼申し上げます。私の報告が将来留学を志す皆様へ少しでもお役に立てば幸いです。

 Labのクリスマスパーティー(プレゼント交換ではポップコーンメーカーを貰いました)
Labのクリスマスパーティー(プレゼント交換ではポップコーンメーカーを貰いました)