海外留学助成 中間近況報告

氷室 美和 先生
順天堂大学 代謝内分泌内科学
2022年度留学助成(2023年 中間近況報告)

【留学先研究機関】
University of California, San Francisco Diabetes Center

本留学にご助成を賜り、また日々の手続きに際しましてもいつもあたたかいお言葉をいただいておりますこと、鈴木万平糖尿病財団の皆様に深く感謝申し上げます。おかげさまで今夏、留学2年目を無事迎えることができました。

私がポスドクとして研究しておりますのは、西海岸カリフォルニアのサンフランシスコにある、カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)Diabetes Center Ku labです。
 UCSF Diabetes Centerには数多くのラボが所属しており、糖尿病に対する研究内容も様々です。この一年で、週一回のセミナーに加え、センター設立20周年の講演会、コロナ期間中止されていたリトリートも行われ、様々な研究室の発表や交流会がありました。1型糖尿病の免疫治療薬抗CD3抗体(Teplizumab)の開発経緯や承認までのプロセスなどを聞く機会もあり、単一大学内での発表内容を聞くだけでも幅広く、刺激になっています。

 The 2023 Metabolism, Obesity & Diabetes Scientific Retreatでの写真
The 2023 Metabolism, Obesity & Diabetes Scientific Retreatでの写真

日本ではこれまでグルカゴン分泌細胞であるα細胞の発生に関する研究を行っておりましたが、β細胞の機能的な研究にも興味があり、Ku labに留学することとなりました。現在は新規解析アプローチに基づいたインスリン分泌関連遺伝子に関するCRISPRスクリーニングの研究を行っております。クローニングやプラスミド・ウイルスワーク、細胞のグルコース応答性インスリン分泌実験を反復し、条件の至適化に取り組む日々です。日本ではなかなか経験できなかったヒト膵島や幹細胞由来β細胞での実験チャンスもあり、貴重な経験をさせていただいております。
 PIのDr. Kuは実験室に滞在することも多く常にオープンで、週1回のミーティング以外にもいつでも相談できます。探究心を持って取り組み結果を導き出すことの重要性はもちろんですが、楽しむ時は皆で楽しむ、例えばメンバーの誕生日を必ず皆で祝うなど、絆が深まるきっかけになっています。ラボメンバーは4人と少数で若いメンバーですが、皆熱心に研究しておりPI含めてとても仲が良く、実験手法や悩んだ時には親身に話してくれます。Diabetes Centerの他のラボメンバーとも気軽に話すことができ、日本であまり触れてこなかった実験手技も多かったため、このような環境が精神的にも支えになっています。

ラボがあるパルナサスキャンパスはサンフランシスコのダウンタウンからは少し離れたゴールデンゲートパークの傍にあります。特にキャンパス周辺は霧が出ていたり肌寒いことが多いですが、猛暑や極寒になることはなく、四季の分かれ目がはっきりしている日本の環境とは大きく異なっています。大学関連の山の上のアパートから通勤しておりますが、トレイルハイキングに訪れる方も多い山であり、晴れた日には遠くのゴールデンゲートブリッジを眺めながら、自然と触れ合い、通勤するだけでもトレーニングとなるような生活を送っています。

通勤途中に見えるゴールデンゲートブリッジの写真
通勤途中に見えるゴールデンゲートブリッジの写真

日本と異なる文化に感激することも戸惑うこともあり、キャンパス周辺は穏やかとはいえやはりただ歩くだけでも気を抜けない緊張した生活ではありますが、多くの方の支えで生活できております。
 2年目もご報告ができるよう、引き続き取り組んでまいります。
 今後とも、何卒よろしくお願い申し上げます。