海外留学助成 中間近況報告
2021年度留学助成(2022年 中間近況報告)
【留学先研究機関】
Division of Nephrology-Hypertension,
Department of Medicine,
University of California, San Diego
早いものでサンディエゴでの留学生活も一年を過ぎました。あっという間でしたが慣れない海外生活、新しいラボでの研究活動、すべてが濃厚な一年でした。まだ中間点でありますが、留学報告をさせていただきたいと思います。
私が所属するVallon研究室は腎臓に発現するトランスポーターの病態生理の解明に取り組んでおり、なかでも近年糖尿病の治療薬として注目されているSGLT2の機能解析に力をいれています。実験手法は主にマウスを用いた動物実験で、糖尿病性腎症や急性腎障害をはじめとした様々な腎疾患モデルと遺伝子欠損マウスや阻害剤を組み合わせてその表現型を解析しています。さらにはRNA seqやプロテオミクスを応用した網羅的解析手法も取り入れています。ラボ独自の研究テーマだけではなく、他大学の研究グループや企業との共同研究も盛んで、多くのプロジェクトをラボメンバーで協力して取り組んでいます。
こちらにきた当初は困難の連続でした。まず職員として登録されない限り実験はおろか研究棟に入ることも制限されます。その手続きにソーシャルセキュリティー番号の取得や大量の書類作業、講習の修了が必要です。新型コロナや私の不手際が拍車をかけ、結局IDカードを手に入れるのに3か月を要しました。いよいよ研究がスタートしても、経験がある実験手法が安定しなかったり、トラブルシューティングをしようにもうまくコミュニケーションがとれず前に進めなかったり、特に精神面で本当に大変でした。やっと最近になって手技も安定し、ポジティブ(+ネガティブ)データも増えつつあります。また自分が担当するプロジェクトも増えてきたので、少しずつ充実してきています。英語の進歩はいまひとつですが、毎週ある進捗報告は少し?スムーズに話せるようになってきたと感じています。私の研究成果は追々ご報告できればと思っています。
サンディエゴはほぼ毎日快晴で、大学周辺は治安も良くて住みやすいです。割高ですが日系スーパーも充実しており、日本の食材も手に入ります。ただ生活面では特に物価の高さに驚かされます。円安も手伝って2ベッドルームで賃料が月40-50万円近くしますし、娘が入学したプリスクールは月15万円でした。私は幸い新型コロナのピーク時期に渡米したため大学アパートメントに空きがあり、半額程度なので命拾いしています。最近では新型コロナのニュースよりも経済ニュースが主で、記録的インフレが問題となっているようです。また我々にとっては記録的円安も加わり、こちらで日本人留学生が生き抜くことはとても大変な状況です。
こちらにきて家族との時間は格段に増えました。ラボによって違うと思いますが、こちらは仕事のフレキシビリティーが高く、必要な研究実験はこなせば、時間の使い方は比較的自由です。実験が終われば早めに帰って子供とプールや公園で遊んだり、何かイベントがあれば休みを取ったりしています。サンディエゴには有名なビーチや動物園、レゴランドなどの遊園地が多くあり、年間パスを買って家族と出かけています。またロサンゼルスやアナハイムまで車で1時間半ほどですので、遠出を楽しんでいます。
といっても家族がサンディエゴに来た当初は適応に苦労し、早々に帰国するのではないかと危惧していました。でも妻は仕事をはじめたり、現地の友人もできたりと、アクティビティーを広げています。泣きながら学校に行っていた娘たちも少し余裕が出てきたようです。かくいう私も家族に支えられながら研究に励む毎日です。
あまりまとまった内容ではありませんが中間報告とさせていただきます。最後にご支援いただいている鈴木万平糖尿病財団、快く送り出していただいた東北大学腎・膠原病・内分泌内科医局の皆様、そして日々サポートをいただいているDr Vallonとラボメンバーに御礼申し上げます。